伊藤忠の社長をされ、現在は代表取締役会長CEOを務められている岡藤正広さんのひとりの商人を読みました。
この本は、経営者にとって「闘争心」の大切さを教えてくれる一冊です。
本の中で語られているのは、華々しい成功談だけではありません。幼少期の家庭環境のこと、体調を崩し思うように働けなかった時期のこと。決して恵まれているとは言えない状況の中で、どう考え、どう踏ん張ってきたのかが、非常に率直に書かれています。
読んでいて強く印象に残ったのは、「辛い経験を、マイナスで終わらせていない」という点でした。
その時はつらい。理不尽に感じるし、逃げ出したくもなる。でも、その経験が後になって、人の痛みを理解する力になり、無理をしない判断軸になり、最終的には親孝行という形にまでつながっていく。
人生の中で起きる出来事は、その瞬間だけを見れば、プラスかマイナスかで評価してしまいがちです。でも、時間が経ち、立場が変わると、意味の見え方がまったく変わってくる。この本は、そのことを教えてくれます。
また、日本の大企業の社長の在任期間は、平均すると4.5年程度と言われています。非常に短い期間です。優秀な人材が多く、次の候補者も控えている。そういう環境では、「大きな問題を起こさずに任期を終える」ことが、無意識の目標になってしまうケースもあると思います。
でも岡藤さん、その時間制約を言い訳にせず、持ち前の闘争心と反骨精神を前面に出し、伊藤忠商事を徹底的に変えていきました。
さらにすごいと感じたのは、そういう人物をトップに指名し、任せきる判断が、一代限りではなく、脈々と続いている社風です。
先輩からすると闘争心のある人は、きっと扱いづらいです。反骨精神のある人は、組織の中で浮くことも多いです。それでも、「変える役割」を担う人を社長に据える。これは、簡単な決断ではありません。
この本を読み終えて、「辛い経験は、必ずしも人生のマイナスではない」
そして
「経営者にとって大切なのは、任期の長さではなく、どれだけ本気で向き合ったか」
そんなことを、あらためて考えさせられました。
経営は、きれいごとだけでは進みません。最後に必要になるのは、やはり闘争心なのだと思います。

