先日、農林水産省主催の和文化シンポジウムが開催されました。僕はその中で、「伝統文化を未来に残すための採用と育成の取り組み」についてお話しさせていただきました。

僕は1975年生まれの50歳。この年、日本で生まれた子どもは約190万人でした。25年後の2000年生まれは約120万人、そして昨年2025年に生まれた子どもは70万人を下回るとも言われています。数字を見ると、改めてその減少の早さに驚かされます。

和文化は、外国の方にもぜひ楽しんでもらいたい文化です。ただ一方で、文化は「鑑賞されるもの」であると同時に、「支える人」がいなければ続いていきません。
どれだけ評価されても、どれだけ海外で人気が出ても、日本国内でその文化に関わる人が減り続ければ、いずれ成り立たなくなる。そんな現実も、正面から受け止める必要があると感じています。

この人口減少のなかで、僕たちは「人が減ったから仕方がない」と考えるのではなく、数が減る前提の社会で、選ばれる業界になる必要があります。若い人たちから「この業界で働きたい」「この会社で成長したい」と思ってもらえるかどうか。そこが、これからの分かれ目だと思います。

丸上では、そのために生産性を高める取り組みとして、マーケティングの強化やDXを進めています。ただ、それだけでは十分ではありません。もう一つ大切にしているのが、意図的にコミュニケーション量を増やすことです。

価値観の違いを「ジェネレーションギャップ」という言葉で片付けてしまうことは簡単ですが、実際には世代に関係なく、人の価値観はもともと違います。その違いを否定するのではなく、まずは認め合い、尊重し合う。その前提があって初めて、健全な組織は成り立つのだと思います。

また、こうした考え方や取り組みを、社内外に向けて継続的に発信していくことも大切にしています。社員の定着を実現するためには、入社前と入社後のギャップをいかに埋められるかが重要です。採用人数ばかりを重視すると、どうしても実態以上によく見せようとしてしまいがちですが、そのギャップによって退職が起きてしまえば、求職者にとっても企業にとっても損失しか残りません。逆に言えば、働き方や環境を整えることが先で、採用はその結果としてついてくるものだと思っています。

今回いっしょに登壇された方々は、各業界の第一人者ばかりで、正直なところ少し緊張しました。

最後のトークセッションでは、遠州茶道宗家十三世家元・小堀宗実氏にコーディネートしていただきました。ちょうど先日テレビ番組にも出演されていたこともあり、勝手に親近感はあったのですが、独特の価値観から投げかけられる質問には、やはり背筋が伸びました。

和文化を「守る」だけでなく、「続く形にしていく」。
そのために、企業として何ができるのか。今回のシンポジウムは、改めてその問いを自分自身に投げかける時間になりました。