久しぶりに人生観を揺さぶられる本に出会いました。
樋口耕太郎さんの『人生とは長い時間をかけて自分を愛する旅であるーこころの資本の経済学』です。
樋口さんは野村證券でキャリアをスタートした“金融のプロ”ですが、その華やかな経歴の裏側で、なぜ人は生き、何を目的に働くのかという根源的な問いに向き合い続けてきた方です。波乱万丈な人生経験を踏まえて紡がれた言葉が随所にあり、一つひとつに重みを感じました。
最近はお客様からさまざまなご依頼を頂く機会が増え、ありがたい状況が続いています。その一方で、ふとした瞬間に「大事なものを置き去りにしていないだろうか」という不安がよぎります。売上や利益につながる判断が、本当に社会の幸せの総和にプラスなのか。ときにはむしろ反対方向に働いているのではないか、と感じることもあります。
この本は、そんな“もやもや”を見事に言語化してくれました。
そしてもう一つ大きかったのは、上場とは何か、事業売却とは何か、その本当の意味を深く理解できたことです。
普段ビジネスの現場で何気なく語られている「成長」「上場」「事業譲渡」といった言葉が、資本主義の構造の中でどう位置付けられ、誰にとって何をもたらし、そして誰が犠牲になり得るのか──そこにある“人間の痛み”の側面を初めて立体的に捉えることができました。これは非常に大きな学びでした。
読んでいて感じたのは、この本の多くの部分を丸上の経営にそのまま活かすことができるということです。丸上は上場企業ではなくオーナー企業です。だからこそ、短期利益に振り回されず、「人が中心の経営」を選び続けることができる。善意が循環し、社会の幸せと相関する会社をつくることができる。
すぐには実現できなくても、このような大きな考え方を持って取り組んでいきたいと思わせてくれる本でした。

