先日、目黒の喜多能楽堂で開催された「中村京藏 青嵐の会」に伺い、『新版 山月記』の舞台を観る貴重な機会をいただきました。
喜多能楽堂は今年改修され、伝統と現代性が美しく調和した、まさに格式ある空間でした。舞台と客席が一体となるような緊張感と静けさに包まれ、芸術に深く向き合える特別な時間が流れていました。自宅から徒歩圏内にこのような素晴らしい能楽堂があるとは、少し誇らしい気持ちにもなります。
演目は、『新版 山月記』。冒頭の独特な語り口や象徴的な演出に戸惑いながらも、物語が進むにつれ、その世界観にすっかり引き込まれていきました。
中村京藏さんの演技は圧巻のひと言。李徴の内面にある葛藤や孤独が、言葉と所作を通して見事に表現されており、観ている側の感情をも深く揺さぶります。文学的で抽象的なテーマでありながら、舞台上ではそれが確かな現実として立ち上がるような、そんな強い力を感じました。
上演時間はおよそ60分とわずかな時間ながら、豊かな余韻を残す舞台でした。こんなにも深く、繊細で力強い和の表現が、日常のすぐそばで息づいていることに改めて感動しました。
和文化が持つ力、美しさ、深さを、またひとつ再確認できた一日。今後も機会を見つけて、喜多能楽堂での舞台を拝見したいと思います。


