おはようございます。先日もニュースになっていましたが、政府が成人年齢を現行の”20歳”から”18歳”に引き下げるための民法改正案を来年の通常国会に提出する方針を固めたそうです。それに対して法務省は1日、引き下げ実施までの周知期間などについてパブリックコメントの募集を始めました。

http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080150&Mode=0

成人年齢の変更というと、呉服業界としては当然”成人式”がどのようになるのかを考える必要があります。統計的に呉服市場の約2割は成人式や振袖に関連するものです。万一この分野が大きく変化すると業界全体の影響は避けられません。

また、現在の製造環境・仕立環境や着付けを考えると、仮に振袖を扱っていない会社であっても、連鎖的にマイナスの影響がでることは間違いないと思われます。そして何より、成人式で着物を着た”良い思い出”が、若者に日本の呉服のよさをアピールする良い機会となっているのではないでしょうか?

早速、僕も資料を読んでみました。読む人により解釈の違いもあると思いますが、大まかにはこのような内容が記されていました。

①全体の方向性

法制審議会の答申では、「民法が定める成年年齢を18歳に引き下げるのが適当である。」とされていて、国としては成年年齢を18歳にするかしないかではなく、いつから18歳にするかという考えで、処理を進めている。

②目的

日本社会が急速に少子高齢化が進行しているので、若年者に社会・経済において、積極的な役割を果たす事が期待される。成人年齢を引き下げる事は、早くに「大人」として扱い、社会への参加時期を早めることを意味する。

③問題点

現在の引き下げをめぐる問題は、契約年齢を引き下げることによる悪徳商法による消費者トラブルの増加や、自立に困難な若者がより困窮するリスクなど。今回のパブリックコメントでは、飲酒や喫煙、ギャンブルに対しては対象外。成人式については、ほとんど触れられていない。

④基準年齢の考え方

添付されている「民法の成年年齢引き下げについての最終報告書」の7ページにこんな記載があります。

民法が成年年齢としている年齢20歳は、民法以外の多数の法令において、各種行為の基準年齢とされていることや、我が国において成人式が20歳に達した年に執り行われているという慣行等に鑑みれば、法律の世界のみならず、一般国民の意識においても、大人と子どもの範囲を画する基準になっているものと思われる。

そうすると、民法の成年年齢を20歳から18歳に引き下げることは、①民法上、契約年齢及び親権の対象となる年齢を18歳に引き下げることを意味すると同時に、②一般国民の意識の上でも、20歳までを子どもとしてきた現在の扱いを変え、18歳をもって「大人」として扱うことを意味する。

➡ この文章を読むと成人式の考え方や開催方法が変わる可能性が高い。

で、全体をまとめると

①おそらく5年後位には成人年齢は18歳になる。(”民法の成年年齢引き下げの施行方法について”という資料に「社会的影響の大きさを踏まえ、改正法の成立後3年程度の周知期間を設ける事を予定」とある。)

②それに伴い成人式もなんらかの変更が起こる可能性が高い。ちなみに今回の資料では、「普通高校における意見交換会について」の中で、

”受験の最中に成人式を行うのは困るなど、多くの高校生が反対であった。”という記述がありました。

③国民の祝日を決めるのは国会ですが、成人式の開催方法を決めるのは各地方自治体の為、統一された考えがないと混乱することが予想される。

という状況です。そして状況を理解したうえで、まずやらなければいけないのは、業界として”成人式をどのようにすべきかという共通の意思を持つ”ことではないでしょうか?そうしないと成人式を開催する自治体ごとに解釈が異なり、結果としてしきたりがバラバラになり、成人式の意味自体が損なわれる可能性が高いです。

そして、業界が「誰かがなんとかしてくれる。」や「なるようになる。」という考え方だと、誰も答えを見つけられずに、最終的に成人式がエンドユーザーの満足いく儀式にならずに衰退していく可能性が高いと思います。

”土用の丑”だったり、”バレンタインデー”といった儀式はそれぞれの業界が仕掛け、エンドユーザーに支持されて定着しました。これまでの”成人式”も同じです。呉服業界としては、この機会に改めて成人式での着物をどのように提案するかを真剣に考える必要があります。

また、繰り返しになりますが、これは業界共通の問題です。楽観視すれば、業界が団結するいいきっかけになるかもしれません。いずれにしても残された時間はあまりないので、”統一された共通の意志”を作れるよう行動していきたいと思います。そして、その意思ができると、その次のアクションプランが見えてくるはずです。

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