池井戸潤さんの『鉄の骨』を読みました。
この作品は、中堅ゼネコンに勤める若手社員が、東京の地下鉄工事の受注を巡る熾烈な競争と、その裏でうごめく談合問題に向き合っていく物語です。社会派の小説でありながら、読み進めるほどに引き込まれ、一気に読了してしまいました。
僕も、システム業界で働いていた時期がありました。着物と違って、まだ形のないこれから作るシステムの見積もりをどう作るか、どこまで要望を盛り込むか、他社とどう差別化するかなど、常に試行錯誤の連続だったことを思い出しました。
もちろん談合などに関わったことは一切ありませんが、業界の「空気」や「慣習」といった目に見えない力に直面し、自分なりに正しさと現実のバランスを取っていたことに、どこか共通点を感じました。
『鉄の骨』の主人公は20代。ちょうど僕がシステム業界で働いていた頃と重なります。社会に出たばかりで、理想と現実のはざまで悩みながらも、一歩一歩自分の信じた道を選び取っていく姿に、当時の自分を重ねて、自然と感情移入していました。
池井戸作品の魅力は、困難な状況のなかでも「既成概念の道」ではなく、「新しい第三の道」が生まれてくるところが好きです。読後にはいつも、清々しい風が吹き抜けるような感覚が残ります。今回もまた、その魅力を存分に味わうことができました。

