今年の夏休みに読んだ本の中で、最も大きな学びを得られたのは、「世襲と経営 サントリー佐治信忠の信念」でした。

サントリーは2023年12月期に売上高が3兆円を突破し、非上場企業としては国内最大規模に成長しました。そんなサントリーが、2014年に社外から新浪剛史氏を社長に招き入れたという事実から、この本は始まります。

この本では、サントリーがなぜ百年以上も創業一族による経営を続けてきたのか、その理由が深く掘り下げられています。ファミリーカンパニーの強みは、長期的な視点での経営戦略の立案や、社員への強い帰属意識の醸成にあると述べられています。

一方で、ファミリーカンパニーが抱える課題として、ガバナンスの脆弱性が挙げられます。上場企業と異なり、多くの株主からの監視がないため、経営者の独断や不正行為が起きやすいというリスクが存在します。

本書の中で最も印象に残ったのは、佐治信忠氏の「運を呼び込む努力」という言葉です。氏は、経営者にとって運は非常に重要な要素であり、常に良い運を引き寄せるための行動を心がけるべきだと強調しています。また、「トップは常に明るく、陽気でなければならない」という考え方も興味深かったです。

佐治氏は、経営者は短期的な利益にとらわれず、20年、30年先の会社の成長を見据えて経営戦略を立てるべきだと説いています。また、理念と短期的な利益が衝突した場合には、たとえ損失が出たとしても理念を貫くことが重要だと述べています。

本書を読み終えた私は、佐治信忠氏の強いリーダーシップと、サントリーが築き上げてきた企業文化に感銘を受けました。しかし同時に、ファミリーカンパニーが抱える課題の大きさを改めて認識しました。

現代社会において、企業は社会的な責任を果たし、持続可能な成長を目指していくことが求められています。サントリーのような老舗企業が、どのように時代の変化に対応し、新たな価値を創造していくのか、今後も注目していきたいです。