いつもありがとうございます。前回ご紹介した「博多の本袋帯」は大きな反響をいただき、とても嬉しく思っています。今回は、伝統技法である「絞り」についてご紹介させていただきます。

職人技が光る「桶出し絞り」とは?

皆さんは「桶出し絞り」という染め方をご存知でしょうか?
その名の通り、染色の過程で「桶」を使用する技法です。桶に生地を挟み、染める部分と染まらない部分を決めて、固くズレないようにしっかりと蓋を閉めて染めていきます。
ここで突然ですが、問題です!
「桶の中に入っている生地」と「外に出ている生地」、どちらが染まるでしょうか?
正解は……「外側の生地」が染まります!(私は最初、中が染まるものだと勘違いしていました……。)
染料が溜まった中へ桶ごと入れて染めるため、外側が染まる仕組みになっています。写真で桶がピンク色に染まっていたのが、実はヒントでした。

幻の技術になりつつある「桶出し絞り」の現状

絞り染めには、有名な「鹿子(かのこ)絞り(疋田絞りなど)」をはじめ、帽子絞り、縫〆(ぬいじめ)絞り、巻上げ絞りなど、多種多様な技法が存在します。その中でも、特に高度な技術を必要とするのが「桶出し絞り」です。
実は昨年、この桶出し絞りの名匠である木永先生のところへ勉強に伺いました。そうしたところ、「来年引退される」というお話を伺ったのです。現在、この技術を受け継いでいる方はほんの数人しかいません。だからこそ、この素晴らしい「桶出し絞り」の魅力を皆様に知っていただきたいと思い、今回ご紹介させていただきました。

命がけの作業と、引退への寂しさ

木永先生曰く、一番大変なのは「桶の中に染料が入らないようにすること」だそうです。
蓋をするには凄まじい力が必要で、男性にしかできない力仕事です。また、白い生地にある点々の線(下絵)に沿って、正確に桶を挟む繊細な作業も、非常に気が張る大変な工程なのだとか。
さらに、使用する桶は先生の自家製ですが、今や工房には4つしか残っていません。染めるたびに桶が染料で傷んでしまうものの、新しく桶を作るのも体力的に難しく、それが引退を決められた理由とのことでした。

現代のスタイルにマッチする、カジュアルで可愛い絞り

「絞りは訪問着(フォーマル)」というイメージが強いかもしれませんが、木永先生の作品はこれほどカジュアルで可愛らしく作られており、今の時代のコーディネートにすごくマッチしています。今年、どこかの展示会などで木永先生をお見かけすることがありましたら、ぜひお声を掛けてみてくださいね!
ちなみに、私は紬が大好きなのですが、木永先生が「小千谷(おぢや)紬」や「白山紬」に施した絞りが本当に大好きです。特に「シマエナガの名古屋帯」はイチオシですので、ぜひチェックしてみてくださいね。